スペイン語には、文法上の主語を持たない文があります。
このような文は、日本語の教材では「無主語文」と呼ばれることがありますが、スペイン語文法では一般に非人称文(oración impersonal)と呼ばれます。
スペイン語の無主語文には、天気や時刻を表す文、存在を表すhay、義務を表すhay que、seを使った表現などがあります。
難しそうに見えますが、日常会話でよく使う形は限られています。まずは、次の表現から確認していきましょう。
- 天気や気候を表す文
- 時刻を表す文
- 存在を表すhay
- 義務や必要性を表すhay que+不定詞
- seを使う非人称文
スペイン語の無主語文とは?
無主語文とは、特定の「誰が」「何が」にあたる主語を持たない文です。
ここで気をつけたいのが、主語が省略された文と無主語文は同じではないということです。
主語が省略されている文
Hablo español.
私はスペイン語を話します。
この文にはyoが書かれていませんが、動詞の活用がhabloなので、主語がyoだと分かります。
つまり、主語が存在しないのではなく、yoという主語が省略されている文です。
主語を持たない文
Llueve.
雨が降っています。
日本語では「雨が」のように表現しますが、スペイン語のllueveには文法上の主語がありません。
このように、そもそも主語を持たない文が無主語文、つまり非人称文です。
| スペイン語 | 主語 | 説明 |
|---|---|---|
| Hablo español. | yo | 主語が省略されている |
| Llueve. | なし | 文法上の主語を持たない |
1.天気や気候を表す無主語文
「雨が降る」「雪が降る」「暑い」「寒い」など、天気や気候を表す文は、代表的な無主語文です。
天候を表すときには、主に次の動詞を使います。
- llover:雨が降る
- nevar:雪が降る
- hacer:暑さ、寒さ、風などを表す
- haber:霧、雲、嵐などの存在を表す
- estar:晴れている、曇っているなどの状態を表す
llover・nevarを使う表現
- En Okinawa llueve mucho.
沖縄では雨がよく降ります。 - Está lloviendo.
雨が降っています。 - En Hokkaido nieva mucho en invierno.
北海道では冬に雪がよく降ります。 - Está nevando.
雪が降っています。
Llueve.は「雨が降る」「雨が降っている」という一般的な天候を表します。
今まさに雨が降っていることを強調したい場合は、現在進行形のEstá lloviendo.も使えます。
hacerを使う表現
- En Japón hace mucho calor en verano.
日本では夏にとても暑くなります。 - Hace frío.
寒いです。 - Hace fresco esta mañana.
今朝は涼しいです。 - Hace viento.
風があります。 - Hace buen tiempo.
天気がいいです。 - Hace mal tiempo.
天気が悪いです。
hay・estarを使う表現
- Hay niebla.
霧が出ています。 - Hay muchas nubes.
雲がたくさんあります。 - Hay una tormenta.
嵐です。 - Está nublado.
曇っています。 - Está soleado.
晴れています。
スペイン語では、日本語の「雨が」「雪が」にあたる主語を置かず、Llueve.やNieva.のように動詞だけで文が成り立ちます。
2.時刻を表す無主語文
「1時です」「2時半です」など、現在の時刻を伝える表現も非人称的に使われます。
時刻を尋ねる基本表現は、次のとおりです。
¿Qué hora es?
今、何時ですか?
ahoraを加えて、¿Qué hora es ahora?と言うこともできますが、通常は¿Qué hora es?だけで「今何時ですか?」という意味になります。
1時はes、2時以降はson
- Es la una.
1時です。 - Es la una y media.
1時半です。 - Son las dos.
2時です。 - Son las dos y media.
2時半です。 - Son las diez de la mañana.
午前10時です。 - Son las ocho de la noche.
午後8時です。
1時だけは単数なのでEs la una.、2時以降は複数なのでSon las dos.のように表します。
正午と深夜の表現
- Es mediodía.
正午です。 - Es medianoche.
深夜0時です。
3.存在を表すhay
hayは、「~がある」「~がいる」と、何かの存在を伝えるときに使います。
特定の人を主語にするのではなく、「ある場所に何かが存在する」と表すため、hayを使った文も非人称文です。
- Hay un supermercado cerca de aquí.
この近くにスーパーが一軒あります。 - Hay una persona en la entrada.
入口に人が一人います。 - Hay muchos restaurantes en esta zona.
この地域にはレストランがたくさんあります。 - No hay tiempo.
時間がありません。
後ろが複数でもhayのまま
hayの後ろに置かれる名詞が単数でも複数でも、hayの形は変わりません。
- Hay un libro.
本が一冊あります。 - Hay tres libros.
本が三冊あります。
Hay tres libros.をHan tres libros.とは言わないので注意しましょう。
過去形でも単数形を使う
存在を表すhaberは、過去形でも非人称で使われます。
- Había muchas personas en la estación.
駅にはたくさんの人がいました。 - Hubo un accidente ayer.
昨日、事故がありました。 - Habrá una reunión mañana.
明日は会議があります。
標準的なスペイン語では、後ろが複数名詞でもhabía、hubo、habráのように単数形を使います。
4.hay que+不定詞「~する必要がある」
hay que+不定詞は、「~しなければならない」「~する必要がある」と、一般的な義務や必要性を表します。
特定の誰かではなく、「一般にそうする必要がある」という意味になるため、hay queは主語を持ちません。
- Hay que estudiar.
勉強しなければなりません。 - Hay que reciclar.
リサイクルする必要があります。 - Hay que llegar a tiempo.
時間どおりに到着しなければなりません。 - Hay que reservar con antelación.
事前に予約する必要があります。
hay queとtener queの違い
誰が行動するのかを明確にしたい場合は、tener que+不定詞を使います。
| 表現 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| hay que+不定詞 | 一般的な義務・必要性 | Hay que estudiar. 勉強する必要があります。 |
| tener que+不定詞 | 特定の人の義務・必要性 | Tengo que estudiar. 私は勉強しなければなりません。 |
no hay queは「~する必要はない」
no hay que+不定詞は、基本的に「~する必要はない」という意味です。
No hay que preocuparse.
心配する必要はありません。
「~してはいけない」と禁止を表したい場合は、次のような表現を使います。
- No se puede fumar aquí.
ここでは喫煙できません。 - Está prohibido fumar.
喫煙は禁止されています。
5.seを使う無主語文
se+動詞の三人称単数形を使い、「人は一般に~する」「ここでは~される」と表すこともできます。
特定の行為者を示さないため、一般的な習慣や、その場所で行われていることを説明するときに便利です。
- Aquí se vive bien.
ここは暮らしやすいです。 - En Japón se trabaja mucho.
日本では一般に長時間働きます。 - En España se cena más tarde.
スペインでは一般に夕食をもっと遅い時間に食べます。 - En este restaurante se come muy bien.
このレストランは料理がおいしいです。
受身のseとの違い
seを使った文が、すべて無主語文になるわけではありません。
| 例文 | 種類 | 説明 |
|---|---|---|
| Aquí se vive bien. | 非人称文 | 特定の主語がない |
| Se venden libros. | 再帰受身 | librosが文法上の主語で、動詞が複数形になる |
初心者の段階では、まずAquí se vive bien.やEn España se cena tarde.のような決まった表現から覚えるとよいでしょう。
無主語文でよく使う表現一覧
| 場面 | スペイン語 | 日本語 |
|---|---|---|
| 天気 | Llueve. | 雨が降っています。 |
| 天気 | Hace calor. | 暑いです。 |
| 時刻 | Es la una. | 1時です。 |
| 時刻 | Son las dos. | 2時です。 |
| 存在 | Hay un parque. | 公園があります。 |
| 義務 | Hay que estudiar. | 勉強する必要があります。 |
| 一般的な行為 | Aquí se vive bien. | ここは暮らしやすいです。 |
無主語文の練習問題
空欄に入る言葉を考えてみましょう。
問題1
En Hokkaido ________ mucho en invierno.
北海道では冬に雪がよく降ります。
答えを見る
答え:nieva
En Hokkaido nieva mucho en invierno.
nevarは「雪が降る」という意味の非人称動詞です。
問題2
________ las tres y media.
3時半です。
答えを見る
答え:Son
Son las tres y media.
2時以降の時刻にはsonを使います。
問題3
En esta ciudad ________ muchos parques.
この町には公園がたくさんあります。
答えを見る
答え:hay
En esta ciudad hay muchos parques.
後ろが複数名詞でもhayの形は変わりません。
問題4
________ que reservar con antelación.
事前に予約する必要があります。
答えを見る
答え:Hay
Hay que reservar con antelación.
hay que+不定詞で、一般的な必要性を表します。
問題5
En este restaurante ________ come muy bien.
このレストランは料理がおいしいです。
答えを見る
答え:se
En este restaurante se come muy bien.
特定の誰かではなく、一般的な評価を表す非人称のseです。
まとめ
スペイン語の無主語文には、主に次のような表現があります。
- Llueve.などの天候表現
- Es la una.などの時刻表現
- Hay un parque.などの存在表現
- Hay que estudiar.などの義務・必要性を表す表現
- Aquí se vive bien.などの非人称のse
特に最初に覚えたいのは、次の3つです。
- Hace calor.(暑いです)
- Hay que estudiar.(勉強する必要があります)
- Aquí se vive bien.(ここは暮らしやすいです)
主語を考えすぎず、まずは短い表現をそのまま声に出してみてください。
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よく使う表現から少しずつ、自分の日常をスペイン語で伝えられるようにしていきましょう!



